厭な気分 2026.02.06

ひとりの女が、ある冬の雪の日、教会へ出掛ける……というだけの話。こう、いわゆる”信頼できない語り手”というのを目指して書いた…… 短いです。果たしてこの女はほんとうに”人間”なのか!?(なんだその惹句は……) 教会に入ると、厭な気持ちになる。 教会の中…

灰になった人魚姫

あらすじ。 人魚の女の子、マシリの究極の目的は、自分のお姉さんたちのように、恋に破れただけで泡となって消えるというような馬鹿馬鹿しい目に遭わないようにすることでした。が、マシリのおばあさんは言います。人魚というのは人間に恋をするのが一番だ、…

お前、お前、お前‼ 俺をそんな風に見やがって、の俺と、あなたにそんな風に見てもらえて嬉しい、の自己像から脱するための危険な領域:橋本治『武器よ さらば』感想

※いつも以上に憶測と「個人の間違った解釈」で貫き通されている内容なので、話半分で読んでください。だけど読者として現段階で感じたことを残しておこうとおもったので、書きました。 私は読者である。そして、たった一冊の本のまえで、読者というのはたっ…

美しいものは単純で簡単だ:橋本治『人はなぜ「美しい」がわかるのか』(2002)感想

今回はかなり短いぞぉ!(文字数が) というわけでタイトルに則って短くいくが、そのまえに橋本治『人はなぜ「美しい」がわかるのか』(2002)の概要ね。 人はなぜ、「美しい」ということがわかるのだろうか?自然を見て、人の立ち居振舞いを見て、それをな…

細野晴臣の客層と大滝詠一の客層は被っているのかいないのか

私は両者の完璧かつていねいなリスナーではないため、この文章は完全に完璧なものを目指せないわけでありまして、というのもわたしは好きになったものを網羅的に追っていくのが大変に“嫌い”で、老後のために「知らない部分」をとっておくというたいへんさも…

彼は誰の何を騙していたのか:NHK「ベルトラッキ贋作事件~世界をだました希代の詐欺師~」を見た

見たぜ、2025年11月14日(金)日放送、未解決事件File.07「ベルトラッキ贋作事件~世界をだました希代の詐欺師~」 この特集を見て私がおもったのはひとつ。「贋作」を意図的に作った彼が騙したものとは何だったのか。 番組の概要。 世界のコレクターが買い求…

好きな言葉の話

私の好きな言葉。それはなんといっても、「みがきにしん」にとどめを刺しますね。 これはほんと、十年くらい好きです。 「たく」という言葉(?二文字?)も好きです。「たくま」とか、「みたく」(みたく、の発音のかわいらしさと字面のかわいらしさは計り…

自分の中だけで通じる言葉と猫の話:普通の日記

短い話。 十年前の体重と比べると、八キロほど太っている。ために、運動と称して最近、あちこちをうろうろとうろつき回るように心がけている(つまり散歩をしている)。 その日は晴れていて、風もそれほど強くなく、散歩日和だった。 私がその時歩いていたの…

絵は立体か否かの話:普通の日記

今現在の個人的現状においてはぜいたくな行為になってしまって久しいが、今から八年(!)ほど前の一時期、私は美術館に絵を観に通っていた。 ちょうどそのころ読んでいた岡本太郎の文章のなかに、いまでも思い出す言葉がある。曰く、「画集に印刷された絵と…

短い”ユーミン”の話:普通の日記

”ユーミン”のことは知っていた。『ルージュの伝言』を歌っていたひとのことだ。 有名な曲を沢山持っている人で、とても才能がある人で、私とは関係のない人。 夏のある一日、私は電車に乗って喫茶店へ出掛けた。 その日は特別暑くもなく、寒くもなかった。私…

ヨーロッパ映画の中の蓄積と歴史

中学一年生の頃の、理科の授業が終わった後のことだった。 その授業で、私は原子の話を聞いた。この世のあまねくすべてのものは、原子というものが存在することによって成り立っているらしい。 ということは、と私はおもった。 授業が終わって、休み時間にな…

酔っ払いと哲学と武士は食わねど……:『革命的半ズボン主義宣言』(新装版)感想

私はこの『革命的半ズボン主義宣言』の河出文庫版を所持していない。ために、以下に書かれる内容は、すべて1991年に河出文庫から出したものを“わざわざ”今再び単行本化しなおすという過程を経て2024年12月20日に初版が発行されたところの新装版を元にして感…

アナタは、生まれてからいちばんはじめに好きになった本のことを覚えているか:アン・ローレンス『幽霊の恋人たち―サマーズ・エンド』

悲しいことに、僕は覚えていない。未就学児だったころの記憶がほとんどないからだ。 もしも僕が産湯に浸かったころのことまで覚えている三島由紀夫だったら、その頃の記憶も鮮明に覚えているのだろうけど、僕が覚えているのはほんのちょっぴりのことで、その…

廃墟に置かれた交換日記

わが屍に化粧する/『廃墟に置かれた交換日記』 廃墟に探検に出掛けた中学二年生の男の子が、廃墟に残された日記を読むと、そこには不思議なことが書かれていて……という話。倫理的にあやうい描写等ありますが、フィクションです。さいごベタになっちゃった。 …

欲望は誰の心に宿るか:『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』前編 第Ⅱ章 眠りの中へ…――萩尾望都論 感想

”萩尾望都”という現象に出会う前、私はずっと、ぼーっとしていた。 漫画を読んでぼんやりとし、本を読んでぼんやりしていた。人と話しながらぼんやりして、テレビやアニメをじーっと見つめながら、それでもずっとぼんやりしていた。 意識はぼんやり、――茫漠…

太宰治に恋をしてみよう

あなたは昔から、町一番の器量よしと言われて育った。 正月、家の門の前で晴れ着を着て、妹といっしょに羽根つきをしていると、通りかかった知り合いのおじさんが、あなたとそれから妹の前で立ち止まる。やあ百合ちゃん、新年どうもおめでとう。 あなたはそ…

陰鬱な美青年、陰鬱なる中年男、牛

タイトル通り陰鬱な美青年と中年と牛が出て来て橋の上で一瞬邂逅するがすぐに自分たちの生活に戻っていき、そしてある深夜映画を契機にして自分の今までの生活を考え直し、「こんなのじゃだめだ!」とおもったりおもわなかったりする三人の男性の一瞬間を書…

性格破綻者

駄目男に恋していてそういう恋している自分が結構好きみたいな考え方の女の子の一人称をつぶさにご覧いただくという趣向のお話(?)です。現代的倫理に合わない考えの持ち主を観察するという趣味を持たない方には観覧をお勧めしません。(こんなことばっか…

「悪女」は誰のために存在したか:『エヴァの匂い』(1962)におけるふたつの評論に対する感想

私は今、笑っていないが笑っている。拍手喝采をしていないが、拍手喝采をしている。それはどういうことかというと、顔で笑って腹で泣くというのとも違って、つまり、呆れているのである。では、どのようなことで呆れているかというと、ある時代の、あるイン…

一人称の表記ゆれについて

※以下の文章はSNS上において「当ブログを書いている人物の一人称が安定していないのはなぜか」といった趣旨のご質問をいただいたことにより書かれている文章であり私信に近いため、興味のない方はスルーでお願いします >SNSのポストによって一人称が異なる…

はっぴいえんどのなかに取り残された男の子の目の前には、ノックするドアもない――付、バナナブレッドのプディングのレシピ:『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』後編 第Ⅸ章 ハッピィエンドの女王――大島弓子論感想

本の感想を書こうとおもっているのに、泣いていて話にならない。 私は橋本治の書いたこの“大島弓子論”を、多分、都合二回読んだ。もしかしたら記憶にないだけで読んだのは今回で三回目かもしれない。そして三回目に当該文章を読んだら、泣けて泣けて仕方がな…

ありのままのキミが好きだよと言われたい女の子と、そんなバカな女の子のところになんで行ってしまうんだよッな男の子:『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』後編 第Ⅵ章 優しいポルノグラフィー――陸奥A子論に対する文句

「わたし」は、今、ちょっと怒っている。 なんで怒っているかというと、好きな人に、好きなものを否定されている(あるいは否定されたと勘違いしている)ためである。「わたし」は、「わたし」が「好きだ」とおもっている人と、「好きなもの」が同じだったら…

運命の女の子に「あなただけがぜったいに正しいわ」と言われたら、男の子は永遠に「正解」で居られる:『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』後編 第Ⅷ章 全肯定としての笑い――吾妻ひでお論感想

注:世の中の政治的な側面(?)に触れる箇所があります。特定の政治信条があってそれが譲れない場合や「お国のやっていることはすべて正しいんだ」と”信じている”人、「趣味と政治は分けて語ってほしい」とおもうひとは読まないでください 急いでいる(?)の…

せっかく俺のために焼いてくれたのなら、色鮮やかなうちに俺に抱かれてしまえヨ。☜ヤだねな橋本治とツァラトゥストラ的なもの:『蓮と刀』”書評”

第一章 使用上の注意をよくお読み下さい 本文の成立について まず、個人的な状況からはじめたい。 僕は過去、「マンガ読み」だった(いまは全然読めてないのでマンガ読みからは落第した)。 そして僕は現在「小説読み」であり「映画好き」である。そういう僕…

やっと読めたぞ橋本さんのポエティック・センチメンタル:詩集『大戦序曲』感想

すべてを言い尽くさなければ気が済まない橋本さんに、ポエムは作れない。 以上。 以下蛇足(またこのパターンか? という話ではあるが大体からして「詩」に対する感想などという存在そのものが「野暮」の極みであって、「詩」というものは他者がそれを読むの…

 俺のことを捨てるからそういうことになるんだよ。フン、バカ♡な橋本治と沖雅也とちょっとだけ大島弓子な「ニルヴァーナはまだか?」:『とうに涅槃を過ぎて』感想

注意 これ以下の文章は多分な誇大解釈や個人的意見がふくまれています。そして以下の文章はそれらの文章を「正しさ」として提示するわけではなく「こんなふうにも読めた」というひとつの読み方の種類を提示する以外の何ものでもありません。また、故人につい…

『極悪女王』を観た!:愛と誠と極悪女王

観た! 最高だった! 以下、よかったこと! 何から書いていいかわからないから箇条書きで書く! ・一話から五話まで、はじまりからおわりまでずっと号泣 ・美術が良い!! ・キャストが良い! ・五話完結なんて素晴らしい! ・俳優は根性だ! ところで、「日…

二十代でエンタメの正解にたどり着いてしまった人のエンターテインメントのかたちの変遷:新井素子と冨樫義博は素晴らしいのはなし

というわけで、いまふたたび新井素子の話をしてしまうが(大好きなので……)、十代、二十代にして「エンターテインメントの何たるか」を知り、提示してしまえた「天才たち」が、そののち、夢見るときを過ぎても(もちろんご本人たちにとっては現実そのものに…

2010年の「1979年」と2024年の「1979年」:普通の日記

というわけで私は、最近またしても時間の「ずれ」というものの認識のあいまいさについてほとほとこまりはてている。 短く書く。ほんとうに短く書く。つまり僕がさいきん、とても悲しがっていること、それは、「過去の僕よりも、僕は“過去”という概念を楽しめ…

小津安二郎とヤン・シュヴァンクマイエルと“I am Alice ! “な中年たち:『ボーはおそれている』(2023)感想

朝、まぶしくて目を覚ました。 で、テレビをつけた。すると、アマゾンプライムの宣伝が目に飛び込んできた。「どうせ有料でっしゃろ?」とおもいつつページを開くと、『ボーはおそれている』(2023)が、はじまった。ので、私は、朝っぱらから優雅に(?)そ…